2013年6月29日土曜日

第十四回 研鑽句会


(最高得点句)

ビールだコツプに透く君の大きい指 (6点)

 

(6点)ビールだコツプに透く君の大きい指 ◎◎○○
(5点)バラックの寺ができた梅が咲き過ぎた ◎○○○
(5点)となりでも筍さがしてる春 ○○○○○
(4点)七面鳥が向うむいてふくるる焚火 ◎○○
(4点)林檎をかぢつて、夜、浪の音がしてゐる ◎◎
(4点)冬、冬、枯れたあぢさゐのみ光つて ◎◎○●
(3点)つくしが出たなと摘んでゐれば子も摘んで ◎○
(3点)子を連れて草いきれの道曲つて見える ◎○
(2点)紅い芙蓉をひとまはりして来る子です ○○
(2点)温室の硝子一枚壊れて夏 ○○
(2点)幼稚園は休みです杉菜ぞくぞく ◎
(2点)土ばかりいぢつて何を抜く子ぞ ○○
(1点)赤蜻蛉多く飛過てから庭に打つ水よ ○
(1点)土筆が伸び過ぎた竹の影うごいてる ○
(1点)光線を踏みたんぽぽ咲き過ぎた ○
(1点)桜くろんだ小学校すでにひけてる ○
(1点)子が靴の土ほこり麦の穂が出た ○
(1点)飛行船の灯あかく来る短日 ○
(0点)山吹の蕾何のおちんこぞ ○○○●●●
(0点)新緑の町へ来る汽車の音です ○●
(0点)お馬お馬あしびの花も過ぎたよ ○●
(-1点)梅若葉つき抜けた竹の嵐だ ●
(-1点)昼ぬすびとを追ふ巡査梅若葉です ○●●
(-1点)つやつやひれあざみうちの玄関だ ●
(-1点)芹素足にふれた ●
(無点)日射さんさんと梅を落してる
(無点)ちらちらと燈が楽しんで雪の斜面だ
(無点)芒青うて蝶を追ふ子ぞ
(無点)曇り硝子しめても向うの杉菜
(無点)柊にながれる雨こぼれる



(以上、30句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。



◆作者紹介
北原白秋(1885-1942)
童謡作家、歌人、詩人として知られるが、数は少ないながらも俳句も残している。荻原井泉水との論争があったせいか自由律の句が少なくない。出句原本は「白秋全集38 小編4」(岩波書店)。

2013年6月28日金曜日

第十四回 鍛練句会

(最高得点句)
いっしょのみちはみじかいゆうぐれ(8点)

 

(8点)いっしょのみちはみじかいゆうぐれ ◎◎◎○○
(4点)空き家の窓の夜より暗く ◎○○
(4点)お悔やみの口から餃子のにおい ◎○○○●
(3点)すれ違う赤子が咳をした ◎○
(3点)攻撃的ミッドフィルダーそれは僕ではなかったTVの中 ◎○
(3点)Fは鳴りませんでした十五歳 ○○○
(3点)後半37分ピザ届きました ◎○
(3点)後ろ姿消えてそこにも道があった ◎○
(3点)この店に決めた夏のにおいのする ◎○
(2点)涼しげな笑顔の女だ酔えない ○○
(2点)くたびれた枕カバーからいろいろと出てくる ○○
(2点)吐息かさねて月を研ぐ ○○
(2点)朧月に電車が着いた ◎
(2点)達筆が便所の壁 ○○
(2点)お母さんに切られたそうなおかっぱが俯いている ○○
(2点)ほのあかい胸もとあとは闇 ○○
(1点)死んだのは妹の方です服を脱ぐ ○
(1点)札束を前に黙ってみる俺達 ○
(1点)コレクションなぞ捨てちまおうか南風(はえ)強く吹く ○
(1点)もういらない玩具なのか夾竹桃にぶら下がって ○
(1点)人身事故の駅何事もなく雨の夕暮 ○
(1点)もうだれも叱ってくれない影夏草にのびていく ○
(-1点)しゃがむ男の陰に猫 ●
(-1点)視界も定かでない目に梅雨晴れ ●
(-2点)先輩の背中をどやしつけた飲み会の翌日 ●●
(-6点)感傷にひたってばかりもいられない ●●●●●●
(無点)その女には触れさせなかった日に揺れる海の音
(無点)ホトトギス告げる白線止まりなさい
(無点)2ちゃんに書き込むというクレームに困っているのだ老店主は
(無点)カフカに傍線を引いても忘れているテスト時
(無点)コピー&ペーストの煉獄
(無点)職場には阿修羅のような人が要る
(無点)やっぱり男は俺ひとりだった




(以上、33句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。



◆作者発表

【小笠原玉虫】
空き家の窓の夜より暗く
人身事故の駅何事もなく雨の夕暮
コレクションなぞ捨てちまおうか南風(はえ)強く吹く

【シブヤTヒロ】
攻撃的ミッドフィルダーそれは僕ではなかったTVの中
2ちゃんに書き込むというクレームに困っているのだ老店主は
くたびれた枕カバーからいろいろと出てくる

【白川玄齋】
視界も定かでない目に梅雨晴れ
カフカに傍線を引いても忘れているテスト時
先輩の背中をどやしつけた飲み会の翌日

【天坂寝覚】
朧月に電車が着いた
いっしょのみちはみじかいゆうぐれ
Fは鳴りませんでした十五歳

【中筋祖啓】
感傷にひたってばかりもいられない
職場には阿修羅のような人が要る
コピー&ペーストの煉獄

【畠働猫】
吐息かさねて月を研ぐ
ほのあかい胸もとあとは闇
もうだれも叱ってくれない影夏草にのびていく

【馬場古戸暢】
しゃがむ男の陰に猫
すれ違う赤子が咳をした
お母さんに切られたそうなおかっぱが俯いている

【藤井雪兎】
札束を前に黙ってみる俺達
死んだのは妹の方です服を脱ぐ
やっぱり男は俺ひとりだった

【風呂山洋三】
涼しげな笑顔の女だ酔えない
ホトトギス告げる白線止まりなさい
この店に決めた夏のにおいのする

【本間鴨芹】
達筆が便所の壁
その女には触れさせなかった日に揺れる海の音
後半37分ピザ届きました

【松田畦道】
後ろ姿消えてそこにも道があった
お悔やみの口から餃子のにおい
もういらない玩具なのか夾竹桃にぶら下がって

2013年6月23日日曜日

鉄屑詩集を読む

※鉄屑詩集「子を連れて」より。

抱いた子が見付けた一番星
この句は私の記憶に強く残っている。夕暮れ時の家族との生活のひとこまが切り取られた、美しい句。

子を抱いて早く寝ろ寝ろうろうろおろおろ
なかなか寝付いてくれない子を抱いて、歩き回っている様が浮かんだ。最後の「おろおろ」が面白い。

乳吐いても微笑んでくれる
これも今だに諳んじることができる句。よくお子さんをみていないと詠めない。

雪待つ子の前にみぞれ
子どもの「あれー?」という顔が浮かんでくる。しかしすぐに気を取り直し、みぞれにはしゃいだことだろう。

洟垂れが私の胸に飛び込んでお出迎え
家庭を持つ人ならではの句だろう。こちらのシャツは涎まみれになっているだろうが、嬉しいものである。

サンタ知らない父でサンタになる
サンタの格好をしたのかどうかが気になるところ。そういえば私もサンタを知らない。そういう習慣を持たない家に育ったのだ。

子らがしがみついてきた外は雪だ
はしゃぎながらしがみついてきたのだろう。「雪やこんこん~」を皆で歌いたくなる。

皿に残ったサンタ欠けている
クリスマスケーキの上にのっている、サンタの砂糖菓子。少しかじったのは、お子さんだろうか。

得意気に見せる娘の掌に天道虫
愛しい生活詠だが、作者の胸中には思うところがあったようだ。詳しくは『草原』25-07号「特集 戦争俳句」を参照。

小さな傘と長グツ駆けてゆく大きな水溜まり
その後ろからゆっくりと後を追う詠み手まで想像できる。

2013年6月16日日曜日

風呂山書房を読む

※風呂山書房「―41―百句夜行「百十三句」より。
※風呂山書房はこちら

金多目に忍ばす部下と飲むのだ
「忍ばす」の主体が詠み手か部下かで、解釈がまったく異なる句。私は部下と読みたい。おそろしい上司である。

夜桜の下の見知らぬ顔だ
自宅近所に桜が立っている。たいていの場合は見知った隣人がその桜を見上げているのだが、今夜の人はどうやらよそ者。これも小さな非日常だろう。

帰りたくない花見の夜だ
祭りの後もそうだが、こういう時はなんともいえない寂しさを感じる。花見の夜であれば、桜は変わらず咲き続けているのだからなおさらである。

赤子あやす妻の眠そうな声
その声はまた、幸せそうな声でもあるのだ。

食べ過ぎた父でいるお食い初め
赤子のための行事だったはずだが、ついつい食べ過ぎてしまった。後々、家族内で「この子のお食い初めのときはおじいちゃんが食べ過ぎちゃって」という会話が繰り返されるのだろう。

林の入口の忘れ去られた叢塚
かつてこの地で飢えて逝った人が幾人もいたことを、この塚だけが記憶している。いつかこの塚も、自身が叢塚であることを語ることすらなくなるのだろうか。

赤子の髪整える風呂上がりの妻
一読、赤子のにおいが漂ってくる句。皆ほくほくしていて、楽しくなる。

わが子の瞳の中みつけた春の空
わが子なりに、この世界を認識し始めているのだろう。元気に育つよう。

赤い椿赤い椿とまだ落ちないのか
椿をみると落ちるかどうかということに思いを馳せるのは、自由律俳句を詠む人たちの職業病な気がする。

子の熱案じる父でいる午後の雷
父はたいていの場合、子どもから離れたところで働いていなければならない。雷がまた不安を募らせる。

鉄の塊なる悦びである昭和の日
おそらく鉄塊入会の際に詠んだものと思う。自分たちが鉄の塊であるという認識はなかったが、そうなのかもしれない。熱いうちにどんどん打たれたいものである。

育児書の増え肩身の狭い太宰治
熱心さに、太宰も感心していることだろう。

アイツなら逝っちまったよ通し鴨
この場合のアイツは人のことか。人が逝こうが季節はうつろう。

2013年6月9日日曜日

第四回VT句会(2013夏)③


コメント欄に参加者のコメントを列記(後半部)。

※上位句ならびに互選集計、作者発表はこちら
※コメント前半部はこちら

第四回VT句会(2013夏)②

コメント欄に参加者のコメントを列記(前半部)。

※上位句ならびに互選集計、作者発表はこちら
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第四回VT句会(2013夏)①

※コメント前半部はこちら
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【最高得点句】(2句)
剃り残しあり初夏ののどぼとけ(9点)
あなたが笑つている私は着ぐるみの中(9点)

【自由律俳句上位句】(5句)
あなたが笑つている私は着ぐるみの中(9点)
わたしたちのふりかえるのがとてもよくみえる(8点)
鎌の刃に去年を生きた草(8点)
朝のマウンドに遺骨(7点)
ベビーカーよけて愚痴のつづき(7点)

【定型俳句上位句】(3句)
剃り残しあり初夏ののどぼとけ(9点)
花冷えのつなぐほかない手があった(8点)
生命線運命線も春の泥(6点)

【題詠句上位句】(5句)
痛いふりしないと悪い気がして天井を見た(7点)
痛すぎて止める新技柏餅(4点)
ここが痛点 薔薇いつせいに散る(3点)
痛い方へと蝶は飛ぶ(3点)
胃痛のあおぞら澄み切っている(3点)

【コンプリート句】(◎と○と●のすべてを獲得した句)(6句)
椿落ちて大音響の汽笛かな(4点)
青春とは何だ答えろ春嵐(3点)
母の日に炎のごとき花贈る(5点)
虹色に暮れていくのが農村だ(2点)
人を殺した手が水をすくう(4点)
漢らに陣痛きたる緑の夜(2点)

―――
互選集計
(9点)剃り残しあり初夏ののどぼとけ ◎◎○○○○○
(9点)あなたが笑つている私は着ぐるみの中 ◎○○○○○○○
(8点)わたしたちのふりかえるのがとてもよくみえる ◎○○○○○○
(8点)花冷えのつなぐほかない手があった ○○○○○○○○
(8点)鎌の刃に去年を生きた草 ◎◎○○○○
(7点)朝のマウンドに遺骨 ◎○○○○○
(7点)痛いふりしないと悪い気がして天井を見た ◎◎○○○
(7点)ベビーカーよけて愚痴のつづき ◎○○○○○
(6点)牛ゆっくりと口動かしながら春ですなぁ ○○○○○○
(6点)生命線運命線も春の泥 ○○○○○○
(5点)母の日に炎のごとき花贈る ◎◎○○●
(5点)柿わかば大統領の顔のシャツ ○○○○○
(5点)枯れていない花を捨て家を出る ◎○○○
(5点)たわむれを墓の上 ◎○○○
(5点)眼の奥を川が流れてゐて痛し ◎◎○
(5点)背を向けても流れている川 ○○○○○
(4点)蛇苺はじめてなんてこんなもの ◎○○
(4点)痛すぎて止める新技柏餅 ○○○○
(4点)人を殺した手が水をすくう ◎○○○●
(4点)椿落ちて大音響の汽笛かな ◎◎○○●●
(4点)カプセルの未熟児笑む五月 ○○○○
(4点)眼帯の中の眼も閉ぢぬ ◎◎
(3点)嫌われたいのか綿パンが白い ○○○
(3点)桜咲け米寿の友が笑うから ○○○
(3点)痛い手をさして盤が近い ◎○
(3点)つまりだからけれどやっぱりの私 ○○○
(3点)灯台の真白きに君立てば夏 ◎○
(3点)ここが痛点 薔薇いつせいに散る ○○○
(3点)颯爽と東京へ出る春の泥 ○○○
(3点)胃痛のあおぞら澄み切っている ◎○
(3点)痛い方へと蝶は飛ぶ ◎○
(3点)新緑や双子の片割れだけが泣き ○○○
(3点)青春とは何だ答えろ春嵐 ◎○○●
(3点)窓開けて逆子体操聖五月 ◎○
(3点)ぼくにだけみえるともだちマグノリア ○○○
(2点)恋の痛み知らずにさくらんぼ実りました ○○
(2点)迷いなく咲いていてみち見失う ○○
(2点)水面打ち船舶の飛ぶ立夏かな ◎
(2点)忘れた人の名花瓶に挿して春 ○○
(2点)虹色に暮れていくのが農村だ ◎○○●●
(2点)死を避けてホルモン注射の痛み ◎
(2点)ソース瓶ソースに汚れ祭果つ ○○○●
(2点)掃除機が敷居にころげ立夏なる ◎
(2点)安心しろ痛点ははずしてある ○○○●
(2点)漢らに陣痛きたる緑の夜 ◎○●
(2点)闇に何も見ない俺の眼 ○○
(2点)暑い日だった祖母の部屋に鉄格子 ○○
(2点)春芽吹く枝の痛みがあればこそ ○○
(2点)夏の庭曲がり切れずに10t車 ○○
(2点)頭痛薬並べてメッセージふふふ ◎
(2点)トンガという国ご存知か五月場所 ○○
(1点)脱臼の痛みに青ざめてひとり ○
(1点)レンブラント光線 シロツメクサの冠をください ○○●
(1点)春が来ても男は生きてる無駄なのか ○
(1点)また痛車のキャラがわかった ○
(1点)遠雷や移転が進む水没地 ○
(1点)あをみどろの青きらきらと指すりぬけてゆく ○
(1点)青き踏む集合写真を撮らぬ人 ○
(1点)雑踏の一人は射抜かれてをりぬ ○
(1点)五月空斬り裂いてこそつばくらめ ○
(1点)十六夜や悪びれもせず帰宅せり ○○●
(1点)痛飲の夜花底蛇を知る ○
(1点)転がったレジ袋 ずっとずっと見守った ○
(1点)人間と等身大の水中花 ○
(1点)栗饅頭イガごと入れて痛てててて ○
(1点)つかれてねむるこども実家の香り ○
(1点)痛いさ 慣れているだけ ○
(1点)涙より柔らかな、牡丹 ○
(1点)満月の鏡一枚叩き割る ○
(0点)裏庭の牡丹の妖しく夜の女かよ ○●
(0点)道欠けの月夜見の森黄泉の守 ○●
(0点)リツイートされ痛い ○●
(-1点)三日月をあしらふビルの島に母といふ母 ○●●
(-1点)たしかに今もひとり深爪の痛さ ●
(-1点)膨れ上がる唇痛々しいみどり ●
(-1点)拭いても汗拭っても汗 ○●●
(-1点)「滅ぼせ」と頭蓋の中を蟲が這う ○●●
(-4点)痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い脚も雨も電話も ○●●●●●
(-5点)あまりにも、とにかく頭が痛すぎる ○●●●●●●
(無点)美少女の幽霊宿り藤の花 
(無点)あなたの背抱きつつ受け入れた痛み 
(無点)迷ったままで日が暮れる 
(無点)蟇鳴くや本当の愛知らぬまま 
(無点)頭の痛い昨夜くらったバーボンだ 
(無点)痛みすら告げず散る葉ひとつひとつみっつ 
(無点)夜が明ける痛み止めまた飲む 
(無点)吹き上げられて轢かれ蝶 
(無点)風車使徒としてたたずんでいる 
(無点)腰痛のやうに高まる卯波かな 
(無点)痛痒し蚊を仕留めたる掌は 
(無点)五月闇行方不明の偏頭痛 
(無点)絹莢や従順という青臭さ 
(無点)旅先で出会ったことのない虫が飛んでいる 
(無点)痛風の辛さ肴に発泡酒 
(無点)みどりの日にみどりのない俺がいる 
(無点)行く春を少しの汗と歩きます 
(無点)満月や血祭り毎の痛み忌み 
(無点)雨になる空映しみどりの葉 
(無点)手術後の抜糸痛くて蚊がうざい 
(無点)寂しがらせる天才だ君も僕も 
(無点)痛い痛いと言う今朝は青空 
(無点)呪い歩けば三日月の低く

※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

―――
作者発表(※五十音順)

【青山茂根】
たわむれを墓の上
雑踏の一人は射抜かれてをりぬ
リツイートされ痛い

【うぐいす】
忘れた人の名花瓶に挿して春
蛇苺はじめてなんてこんなもの
恋の痛み知らずにさくらんぼ実りました

【圓哉】
春が来ても男は生きてる無駄なのか
行く春を少しの汗と歩きます
痛飲の夜花底蛇を知る

【オカピート】
わたしたちのふりかえるのがとてもよくみえる
青春とは何だ答えろ春嵐
五月闇行方不明の偏頭痛

【小川春休】
吹き上げられて轢かれ蝶
掃除機が敷居にころげ立夏なる
痛痒し蚊を仕留めたる掌は

【大原鮎美】
迷ったままで日が暮れる
夏の庭曲がり切れずに10t車
栗饅頭イガごと入れて痛てててて

【小笠原玉虫】
呪い歩けば三日月の低く
十六夜や悪びれもせず帰宅せり
満月や血祭り毎の痛み忌み

【葛城真史】
涙より柔らかな、牡丹
「滅ぼせ」と頭蓋の中を蟲が這う
あなたの背抱きつつ受け入れた痛み

【北大路京介】
人を殺した手が水をすくう
遠雷や移転が進む水没地
死を避けてホルモン注射の痛み

【榊倫代】
窓開けて逆子体操聖五月
レンブラント光線 シロツメクサの冠をください
ここが痛点 薔薇いつせいに散る

【さくら】
雨になる空映しみどりの葉
絹莢や従順という青臭さ
痛みすら告げず散る葉ひとつひとつみっつ

【柴田千晶】
朝のマウンドに遺骨
人間と等身大の水中花
漢らに陣痛きたる緑の夜

【渋谷知宏】
牛ゆっくりと口動かしながら春ですなぁ
椿落ちて大音響の汽笛かな
たしかに今もひとり深爪の痛さ

【白川玄齋】
背を向けても流れている川
青き踏む集合写真を撮らぬ人
痛い痛いと言う今朝は青空

【鈴木牛後】
みどりの日にみどりのない俺がいる
生命線運命線も春の泥
頭痛薬並べてメッセージふふふ

【鈴木桃子】
あなたが笑つている私は着ぐるみの中
美少女の幽霊宿り藤の花
手術後の抜糸痛くて蚊がうざい

【卓】
カプセルの未熟児笑む五月
灯台の真白きに君立てば夏
脱臼の痛みに青ざめてひとり

【タケウマ】
あをみどろの青きらきらと指すりぬけてゆく
剃り残しあり初夏ののどぼとけ
安心しろ痛点ははずしてある

【天坂寝覚】
闇に何も見ない俺の眼
満月の鏡一枚叩き割る
夜が明ける痛み止めまた飲む

【中筋祖啓】
転がったレジ袋 ずっとずっと見守った
虹色に暮れていくのが農村だ
あまりにも、とにかく頭が痛すぎる

【なかやまなな】
嫌われたいのか綿パンが白い
柿わかば大統領の顔のシャツ
膨れ上がる唇痛々しいみどり

【ニレ】
つまりだからけれどやっぱりの私
道欠けの月夜見の森黄泉の守
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い脚も雨も電話も

【畠働猫】
寂しがらせる天才だ君も僕も
迷いなく咲いていてみち見失う
痛い方へと蝶は飛ぶ

【馬場古戸暢】
拭いても汗拭っても汗
花冷えのつなぐほかない手があった
胃痛のあおぞら澄み切っている

【藤井雪兎】
ベビーカーよけて愚痴のつづき
新緑や双子の片割れだけが泣き
また痛車のキャラがわかった

【風呂山洋三】
裏庭の牡丹の妖しく夜の女かよ
颯爽と東京へ出る春の泥
頭の痛い昨夜くらったバーボンだ

【本間鴨芹】
鎌の刃に去年を生きた草
トンガという国ご存知か五月場所
痛風の辛さ肴に発泡酒

【前田獺太郎】
風車使徒としてたたずんでいる
五月空斬り裂いてこそつばくらめ
痛いさ 慣れているだけ

【松田畦道】
暑い日だった祖母の部屋に鉄格子
ぼくにだけみえるともだちマグノリア
痛すぎて止める新技柏餅

【三島ゆかり】
三日月をあしらふビルの島に母といふ母
水面打ち船舶の飛ぶ立夏かな
腰痛のやうに高まる卯波かな

【山崎智佐】
旅先で出会ったことのない虫が飛んでいる
母の日に炎のごとき花贈る
春芽吹く枝の痛みがあればこそ

【山田露結】
眼帯の中の眼も閉ぢぬ
ソース瓶ソースに汚れ祭果つ
眼の奥を川が流れてゐて痛し

【りんこ】
つかれてねむるこども実家の香り
桜咲け米寿の友が笑うから
痛いふりしないと悪い気がして天井を見た

【ロケッ子】
枯れていない花を捨て家を出る
蟇鳴くや本当の愛知らぬまま
痛い手をさして盤が近い

以上全34名。
※句の並びは、自由律俳句、定型俳句、題詠句(「痛」)の順。

2013年6月3日月曜日

第13回研鑽句会 結果発表


(最高得点句)

(6点)杜若(かきつばた)にたりやにたり水の影○○○○○○○●

(6点)夕顔にみとるるや身もうかりひょん◎◎○○


(3点)春やこし年や行けん小晦日(こつごもり)◎◎●
(3点)年は人にとらせていつも若(わか)夷(えびす)◎○
(3点)京は九万九千くんじゆの花見哉○○○○●
(3点)盛なる梅にす手引(でひく)風も哉◎○
(3点)春風にふき出し笑う花も哉◎○
(2点)あち東風(こち)や面々さばき柳髪◎○●
(2点)降音(ふるおと)や耳もすう成(なる)梅の雨◎
(2点)岩躑躅(いわつつじ)染むる泪やほとどき朱○○
(2点)七夕のあはぬこころや雨中天○○○●
(2点)萩の声こや秋風の口うつし○○
(1点)花は賎(しず)のめにもみえけり鬼莇(おにあざみ)◎●
(1点)時雨(しぐれ)をやもどかしがりて松の雪○
(1点)うかれける人や初瀬の山桜○
(1点)秋風の鑓(やり)戸(ど)の口やとがりごゑ○
(0点)姥(うば)桜(ざくら)さくや老後の思い出(いで)○●
(0点)月ぞしるべこなたへ入(いら)せ旅の宿
(0点)花の顔に晴(はれ)れうてしてや朧月
(0点)餅雪をしら糸となす柳哉
(0点)花に明ぬなげきや我が歌袋
(0点)糸桜かへるさの足もつれ
(0点)風吹けば尾ぼそうなるや犬桜
(0点)五月雨に御物(おんもの)遠(どお)や月の顔
(0点)しばしまもまつやほととぎす千年○●
(0点)たんだすめ住めば都ぞけふの月
(0点)影は天の下てる姫か月のかお
(0点)寝たる萩や容顔(ようがん)無礼花の顔
(0点)月の鏡小春にみるや目正月○●
(ー1点)なつちかし其(その)口たばへ花の風●

 (以上、30句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

(作者発表)

・全部 松尾芭蕉

1.春やこし年や行けん小晦日(こつごもり)
2.
(うば)(ざくら)さくや老後の思い出(いで)
3.
月ぞしるべこなたへ入(いら)せ旅の宿
4.
年は人にとらせていつも若(わか)(えびす)
5.
京は九万九千くんじゆの花見哉
6.
花は賎(しず)のめにもみえけり鬼莇(おにあざみ)
7.
時雨(しぐれ)をやもどかしがりて松の雪
8.
花の顔に晴(はれ)れうてしてや朧月
9.
盛なる梅にす手引(でひく)風も哉
10.
あち東風(こち)や面々さばき柳髪
11.
餅雪をしら糸となす柳哉
12.
花に明ぬなげきや我が歌袋
13.
春風にふき出し笑う花も哉
14.
なつちかし其(その)口たばへ花の風
15.
うかれける人や初瀬の山桜
16.
糸桜かへるさの足もつれ
17.
風吹けば尾ぼそうなるや犬桜
18.
五月雨に御物(おんもの)(どお)や月の顔
19.
降音(ふるおと)やもすう成(なる)梅の雨
20.
杜若(かきつばた)にたりやにたり水の影
21.
夕顔にみとるるや身もうかりひょん
22.
岩躑躅(いわつつじ)染むる泪やほとどき朱
23.
しばしまもまつやほととぎす千年
24.
秋風の鑓(やり)()の口やとがりごゑ
25.
七夕のあはぬこころや雨中天
26.
たんだすめ住めば都ぞけふの月
27.
影は天の下てる姫か月のかお
28.
萩の声こや秋風の口うつし
29.
寝たる萩や容顔(ようがん)無礼花の顔
30.
月の鏡小春にみるや目正月

第13回鍛錬句会 結果発表

(最高得点句)

どのカーテンも違う色の静けさ(9点)



(9点)どのカーテンも違う町の静けさ◎◎◎○○○

(5点)もう動かないひとを乗せてサイレンが優しい◎◎○

(4点)春の終わりにスライダーが甘く入りました◎○○
(3点)いただきまテーブルを叩く○○○
(3点)つながれた手と手が後を追ってくる○○○
(3点)また返事書けずに一日の尽きる○○○
(3点)よく喋る友は昔の名前◎○
(3点)公衆便所の臭いの父に金せびられてゴミの人生◎○
(3点)子供を抱いて完全体の女が笑う◎○
(2点)するどい月がひっかかっている朝焼け
(2点)崩れない山となる五月号テキスト○○
(2点)この公園は制圧されたモデルガンの子供たち○○
(2点)前髪を切りたくない娘だったのさ春風◎
(2点)まちはしずかにやぶれたままの幟が立っている○○
(2点)祖母のこぶしのよくまわる菖蒲の湯なのだ◎
(1点)賢治読もうか水田浮かぶ本屋の夜○
(1点)身悶えて闇から雨○
(1点)軋む車輪が五月の愁いを巻き込んで止まる○
(1点)いけないことした夜の次にも朝が来た○
(0点)裏鬼門へ置けと渡された香料を嗅ぐ
(0点)僕の星はどれですか小さい手
(0点)他人事に弛む三十過ぎの涙腺
(0点)名残惜しい背中でやらかした
(0点)台風の目となりて息つぎ
(0点)君は膝に登りたい顔して上目遣いで
(0点)造られた川のざりがに釣る子どもら
(0点)罠の花が綺麗
(ー1点)花薊みっしり詰めた棺で逝く●
(ー1点)「雨ふれば即死よ」○●●
(ー1点)寝付けない夜をひとり過去が迫ってきた●
(ー2点)我慢する世間が出来て喜ぶ人●●
(ー2点)犬とー歩くが 古代だよー・・・●●
(ー3点)おじいちゃん冥途の土産には街灯●●●


(以上、33句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。



(作者発表)

・藤井雪兎
春の終わりにスライダーが甘く入りました
前髪を切りたくない娘だったのさ春風
いただきまテーブルを叩く

・天坂寝覚
まちはしずかにやぶれたままの幟が立ってる
するどい月がひっかかっている朝焼け
造られた川のざりがに釣る子どもら

・本間鴨芹
名残惜しい背中でやらかした
つながれた手と手が後を追ってくる
崩れない山となる五月号テキスト

・風呂山洋三
この公園は制圧されたモデルガンの子供たち
祖母のこぶしのよくまわる菖蒲の湯なのだ
賢治読もうか水田浮かぶ本屋の夜

・松田畦道
軋む車輪が五月の愁いを巻き込んで止まる
どのカーテンも違う色の静けさ
もう動かないひとを乗せてサイレンが優しい

・白川玄斎
他人事に弛む三十過ぎの涙腺
我慢する世間が出来て喜ぶ人
よく喋る友は昔の名前

・小笠原玉虫
また返事書けずに一日の尽きる
公衆便所の臭いの父に金せびられてゴミの人生
花薊みっしり詰めた棺で逝く

・馬場古戸暢
裏鬼門へ置けと渡された香料を嗅ぐ
いけないことした夜の次にも朝が来た
寝付けない夜をひとり過去が迫ってきた

・畠 働猫
身悶えて闇から雨
罠の花が綺麗
子供を抱いて完全体の女が笑う

・渋谷知宏
君は膝に登りたい顔して上目遣いで
僕の星はどれですか小さい手
「雨ふれば即死よ」

・中筋祖啓
台風の目となりて息つぎ
おじいちゃん冥途の土産には街灯
犬とー歩くが 古代だよー・・・

2013年6月1日土曜日

俳句結社鉄塊 社歌『鉄の錆助』

♪故人を偲ぶ気持ちで、しみじみと吟ずる事



1、鍛錬せしー 
  たたらの血潮 鉄塊ぞ
  研鑽せしー 
  お風呂上がりの 西郷か
  草原一望 錆助の
  斃(たお)れし土に 集いたりー


2、鍛錬せしー
  渋谷のハチ公 忠犬ぞ
  研鑽せしー
  寝覚めの茶屋ぞ ケンタロー
  身ぐるみ剥いだ 品代の
  アメとムチとを 受け継げりー

※以下、このような節で歌います。
(眉間にシワを寄せて、握りこぶしで)

1、たんーーれんーーせしーーーー
  たたーーらーのーちしーーおーーー てっっかーーいーぞーーーー
  けんーーさんーーせしーーーー 
  おふーーろーあがーーりーーーのーー さいーーーごーーうーかーーー
  そうーーげんーーいちーーぼうーー さびーーーすーけーのーーーー
  たおーーれーーーし つちーーにーーー つどーーーいーたりーーーーー・・・

2、たんーーれんーーせしーーーー 
  しぶーーやーのーはちーーこーーー ちゅうーーーけーーんーぞーーーー
  けんーーさんーーせしーーーー
  ねざーーめーの ちゃやーーぞーーー けんーーたーーろーうーーーー
  みぐーーるーみーはいーーだーー しなーーだーーいーのーーーー
  あめーーとーーむちーーーーとーーをー うけーーつーーーげーりーーーーー・・・

現在、3番の歌詞を検討中でありますが、そのためには、
第3の屍が必要となる次第です。

なんとも、OBの生贄から、社歌が生まれている背景になりますが、
これが、鉄塊のカラーに一番似合う結果となってしまいました。

肝心のメロディにつきましては、次回の皆様との再開にて、
お披露目させていただく結果になるかと思います。

謹んで、よろしくお願い申し上げます。


歌人 トロピカル祖啓 拝