2013年1月31日木曜日

第九回 鍛練句会


最高得点句

知らない人が四回目の出場だ


最低得点句

スプーンの、事が・・・・・・・・、好きです。


互選集計
(7点) 知らない人が四回目の出場だ ◎◎○○○
(3点) シュークリームをつかむ小指の爪の長い ◎○
(3点) 雨を来て来ただけ ◎○
(3点) 長靴ちいちゃく雨を蹴った ◎○
(3点) 冷蔵庫氷を産んだ聖夜 ◎○
(3点) 舌だしてもの欲しがってぶさいく ◎○
(3点) また寝て夜 ◎○
(3点) 名言つぶやいても私の声 ○○○
(2点) 人妻が待っているメールを開く ○○
(2点) 拳怪我したまま新学期 ○○○●
(2点) ストーブの内々に燃ゆ芯の炎 ◎
(1点) くだを巻く金もなく直帰 ○
(1点) 磨り減ったサンダルが火事だといって走る ○○●
(1点) すっからかんだった夜(よ)に雪満ちる ○○●
(1点) くびれてるからあの星が見える ○
(1点) 肺病む父子であり無口 ○
(1点) 愛も死体も抱いて湖凍りつく ○○●
(-1点) 低きに流れて大河 ●
(-1点) 宿るものごと平たい骨を嚥下する ●
(-2点) スプーンの、事が・・・・・・・・、好きです。 ○●●●
(無点) 名前を呼ぼうとして枯れ草
(無点) 雪の深さ知る右足
(無点) ローソクや見せ物にしてはならない事がある
(無点) 磯野家にない二階が暮れている


※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計


◆作者発表

【渋谷知宏】
雪の深さ知る右足
冷蔵庫氷を産んだ聖夜
くだを巻く金もなく直帰

【天坂寝覚】
雨を来て来ただけ
また寝て夜
名前を呼ぼうとして枯れ草

【中筋祖啓】
ローソクや見せ物にしてはならない事がある
スプーンの、事が・・・・・・・・、好きです。
ストーブの内々に燃ゆ芯の炎

【畠働猫】
宿るものごと平たい骨を嚥下する
すっからかんだった夜(よ)に雪満ちる
愛も死体も抱いて湖凍りつく

【馬場古戸暢】
長靴ちいちゃく雨を蹴った
人妻が待っているメールを開く
シュークリームをつかむ小指の爪の長い

【藤井雪兎】
拳怪我したまま新学期
くびれているからあの星が見える
名言つぶやいても私の声

【本間鴨芹】
磯野家にない二階が暮れている
知らない人が四回目の出場だ
低きに流れて大河

【松田畦道】
肺病む父子であり無口
磨り減ったサンダルが火事だといって走る
舌だしてもの欲しがってぶさいく

五十音順

以上、8名
※今回、白川玄斎さんが欠席(選句には参加)、畠働猫さんが新たに参加いたしました。



2013年1月23日水曜日

句をとる


私が句をとる際に重視していることは、その句がすとんと心に落ちてくるかどうかという点である。すなわち、考える間もなく景が広がる句、そういう句を選んでいる。

句の中に何がしかの違和感を感じたり、頭をひねらなければいけなくなったならば、私はその句をとらない。疑問符が浮かばない句を好むのである。このことは結果的に、句評を書きやすい句を選ぶことにつながる。

実際に選句をする際には、私は三段階評価をする。すなわち、各句の冒頭に、無印(0点)、△(一点)、○(二点)を書き込んで行くのである。もっともこれはPC上で行う場合のことであって、実際の紙の上で行う際には、△の代わりに一本線を、○の代わりに二本線を書き入れている。この作業を、だいたい三度ほど行う。その結果、各句の冒頭部分は以下のようになる。

○△○1  古池や~
△△  2 古狸~
     3 古古古~
   ○4 古時計~
      5 古ん古ん~

こうして点数の多く入った句をとっていくわけである。上の例でいえば、1番の句が特選、2番と4番の句が並選となる。なおたまに、◎(あるいは三本線)を書いてしまう句がある。これは自動的に特選となる。

逆選の時も、加点法を用いる。残った句(上の例でいえば3番と5番)のうちにいいところを見つければ、それを候補から外す。そうして最後まで残った句を、逆選とするのである。消去法と言った方がいいのかもしれない。なおたまに、いきなり×をつけたくなる句がある。これは自動的に逆選となる。

以上、私が選句の際に重視することと、具体的な選句法を述べた。

皆さんがどのようにして選句をしていらっしゃるのか、お聞かせいただければ幸いである。

1/27追記

皆さんのコメントを読んでいて、選句方法に関して書き忘れたことがあることに気付いた。
無点句となる句の中に、選外句が含まれているのである。これは、あまりに私の感覚から異なっていて、どのように判断すればいいのか、何が良くて何がいけないのか、この辺りが皆目見当もつかない句のことである。

したがって私の選ぶ逆選句は、理解はできるものの何かが足りない(加点できない)句となる。なお、好き嫌いでいえば、そもそも句に対して嫌いという感覚を持たないので、逆選句であれど好きな句であることに変わりはない。

2013年1月16日水曜日

鴨を読む、猫を読む


※鉄塊衆名簿自選五句より。

本間鴨芹

春はぬかるみの危うさ

優しさと滑稽さが同居しており、ついつい頭に残ってしまう面白い句。

子と手をつなぐ日曜は強く手をつなぐ

「手をつなぐ」のしつこさがいい。たまの日曜日、たくさん遊んであげよう。

窓灯り数えている一人のばんめし

一人暮らしの景かもしれないし、家族が出かけている時の様子を詠んだものかもしれない。さびしさが伝わってくるが、待ってほしい。「窓灯りを数え」ながらの夕飯とは、どこか高さがあるところにいるのだろうか。高級ホテルで優雅に食事をしている可能性が急浮上してきた。

見納めとなる富士山四百二十円

四百二十円は、富士山から地元へ帰る際の列車賃だろうか。いや、420円の距離のところに住んでいるのであれば、富士山を見ることはいつでも可能だろう。「見納めとなる」とあるので、作者は遠方住まいのように思う。そうすると四百二十円は食事代だろうか。想像が膨らんで行く。

またエッチなこと考えてたでしょ台風情報

テレビでの台風の予報をみているさなかに、女の子に言われたことだと考えた。彼女がそう言うにいたった根拠はなんだろうか。そして「また」とは。作者の何かが垣間見える。

――――

畠 働猫

そのすらりとした足の間から二人も産まれた

何度も声に出して読んでしまった。読めば読むほど味が出る、面白みに溢れた句だ。

何を食べても君はいない

君が出て行った部屋での様子とみた。共に食卓を囲んだ君が戻ってくることはもうない。コーヒーを飲もうと、グラタンを食べようと、もう君はいないのだ。

父という自死の先達がある強み

使われる単語の硬さ、そして強さが、「強み」をより一層強くしている。

ひとりで生きてるわけじゃなかった窓の月

月に心を助けられた人も多くあるだろう。こういう句は、このように口語で詠いたい。

君に降った雨が来た

君の真上を通過して、僕のところに雨雲がやってきたのである。その様子を電話か何かで伝えあったのだろうか。友との句と読むもよし、恋人との句と読むのもまたよし。


2013年1月8日火曜日

新年詠2013

あけましておめでとうございます。
今年も鉄塊をご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

以下、鉄塊衆による新年詠2013をもちまして、年始の挨拶に代えさせていただきます。


うすまった酒のんで居る初日出るころ  天坂寝覚

二日から人が減る神社三日まで待て  渋谷知宏

ひょっこり仮面は誰でしょう  中筋祖啓

年が明けていた窓の無精髭    畠働猫

起きればみんな初詣  馬場古戸暢

新年の闇へ放ってみる雪玉  藤井雪兎

喉詰まらせて逝った話。あと今年もよろしく  本間鴨芹

正月休みなんてない猫が五時から鳴いてる  松田畦道